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まさかの坂



 伊豆大島で買ったおいしい“くさや”を届けに、川崎の実家へ、

 国道20号側道脇の温度計は4℃。厳重に防寒対策はしてきたが、走ると目が寒い。目玉が。メガネしてるのに。
(ぼくの)ランニングのスピードだと、目玉が寒いということはない。自転車ならではの寒さだ。

 しかし、いま、ウエストバッグに青ムロアジのくさやを入れて走っているロードバイカーは、世界におれひとりだろうな、と考えながら多摩サイを下る。

 多摩サイをおりてから、通ったことない道を通ってやろうと思って、脇道にそれ、狭い道を入ってゆくと、まさか! と目を疑うような急坂が現れた。なんと26%。しかも、名前が「馬坂(まさか)」。結婚披露宴のスピーチでおなじみの「まさかの坂」ではないか。
 もちろん引き返しました。



食べるスバル



「ドライバー」誌「ニコニコドライブ」の取材で、群馬県の太田へ行った。富士重工の企業城下町。スバルの本拠地だ。

 当然ながら、路上スバル密度が異様に高い。愛知県の豊田市内がトヨタ車ばっかりだって驚かない。日本のほかのところも似たりよったりだから。でも、太田のスバル密度はびっくりだ。“やらせ”か!?、と思う。数もさることながら、SVXとか初代アルシオーネとかがフツーに走ってるのがスゴイ。いずれも、いま見ると、ますます魅力的だ。

 旧中島飛行機の本社屋が“新築そっくりさん”状態で使われている群馬製作所正門のまんまえには、スバル最中(もなか)で有名な伊勢屋がある。
 スバル360の現役時代、富士重工が初めて社会保険に加入した。その式典のお土産用に、何かお菓子をつくってくれと頼まれて、360の最中をつくったのが始まりだった、と2代目の女将さんが教えてくれた。

 その後、最中はモデルチェンジを繰り返して、今はレガシィB4になったが、360も型をそのまま使って“サブロク焼“というお饅頭として現存している。白あんでおいしい。

 こういうかたちで“クルマのお菓子”が昔からずっと続いているのはスバルだけじゃないだろうか。



もう1月下旬だ

 週末は久しぶりの悪天候。寒いのはいやだけど、カピカピに乾いた体が、お湿りでちょっとモドった感じがしてうれしかった。

 自転車には乗れなかったが、日曜日は雨がなんとかやんだので、ちょっとだけランニングする。多摩サイランナーは、雨さえ降っていなければ、みんなとてつもなく元気だ。

 近くの河川敷にはサッカーコートと野球のグラウンドが並んでいて、どっちもチビッ子がよく試合や練習をしている。
 見ていていつも思うのだが、少年野球のコーチっていうのは、なんでああ怒鳴り散らすかね。ランニングのときから怒鳴ってる。サッカー場からはああいう陸軍的な大人の罵声は聞こえない。

 ヨーロッパのチームで活躍している日本のサッカー選手は、みんな英語やイタリア語やフランス語をものにするけど、プロ野球選手は英語がしゃべれなくても平気で大リーグに行こうとする。アメリカで仕事するなら、まず英語しゃべれなくちゃだめだろう。“スピードラーニング”聞いてるだけでしゃべれるようになるはず、ないじゃん。

 野球の子どものほうがバカなのか。いや、子どものころから大人にああいう怒鳴られ方をしていると、利口もバカになっちゃうと思うけど。


(近所で高圧線のメンテナンスが行われていた。突然、こうやってカバーされているのを見ると、巨大仏出現!みたいでギョッとするけど、妙に魅力もある)

アクアに乗った



 トヨタの新型ハイブリッド、アクアの試乗会。幕張はアクア(水)じゃなくて、雪が降っていた。

 昨年末の発売直前、WebCGがアクアの写真を1点載せたら、1日でWebCG過去最高のアクセスを記録したそうだ。「ぼくがショーで撮ったちっちゃな写真たった1枚なんですよー」と、編集さんがびっくりしていた。手を変え、品を変え、いろいろやってきても、燃費ナンバーワンを謳う新型ハイブリッドのニュースには勝てないと。

 まあ、しょうがないよなあ。空前の円高でも、ガソリンは大して安くならないし、年が明けてからは、イランの報復でホルムズ海峡がいつどうなってもおかしくない、なんてニュースにも脅されるし、とにかくここはガソリンを食わないクルマにしとこう、というマインドが高まるのは当然だ。

 そのアクア、くやしいけど、非の打ちどころなし、でした。低速域ではプリウスより電気自動車っぽい半面、プリウスにはないコンパクトカーらしいキビキビ感もある。2モーター式なのに、車重はフィット・ハイブリッドより80kgも軽い。アクセルを踏み込めば、力強いトルクがグーッと盛り上がる。

 プリウスEXとして生き残っている2代目プリウスの1.5ℓハイブリッド・ユニットを改良して、現行ヴィッツの車台に載せたのがアクアだが、有機体のようにしなやかな乗り心地はヴィッツ譲り。いちばんの美点は、ナニゲに足まわりかもしれない。プリウス人気の陰で、クサることなくコンベンショナルなヴィッツを地道に磨いた努力が実を結んだ、パチパチ、という感じだ。

 クルマに興味のない人は、みんなアクアにいっちゃいそうだが、クルマに興味のない人にはもったいないくらいのいいクルマ。ホンダ、タイヘンだ。

ユーロも安いよ



 ユーロが97円! 数年前は170円近くまで上がって、ヨーロッパ車のインポーターはフーフー言ってたのに。

 4割も安くなったんだから、ゴルフだって4割引きでしょ? と、VWの関係者に聞いたら、為替変動のリスクを背負わないために、以前から円建て決済なので、関係ないのだそうだ。

 でも、確実に安くなっているものもある。ネットで調べたら、チェロの弦がずいぶん安くなっていた。

 ギター弦と違って、チェロのスチール弦は切れない。テンションはギターよりぜんぜん高いし、ふだんゆるめておくものでもないのに、不思議だ。ギターのようにギアはなく、ペグ(糸巻き)の摩擦だけでテンションを維持するだけだから、とくに冬場はペグが一気にゆるんで弦がベロベロになっていることはあるが、切れてはいない。だから、素人チェリストなんか滅多に替える必要はないのだが、替えるとなると、チェロ弦は高い。バイオリン弦の2~3倍する。

 でも、今年は大きなステージもあるので、新調しておこう。
 調べたら、ドイツ製のハンドメイド弦、エヴァ・ピラッツィのフルセット(4本)がネット通販の安いところで2万円くらいになっていた。アメリカのネット通販では200ドル。1万6000円くらいだから、これくらいの価格差なら日本で買おう。
 ちなみに、銀座の山野楽器では今でも3万円以上する。ユーロがいちばん高いときにビジネスクラスに乗って買ってきたんでしょうか。

レバーフライ発見



 月島のダイハツへ行く。
 中野から東西線で門前仲町、大江戸線に乗り換えて一つ目が月島、という初めてのルート。ひと駅ならと、門前仲町から歩く。

 初めて歩いて渡った相生橋からの景色がめちゃめちゃきれいだった。東京の湾岸は絵になる。
 高層住宅が林立するこのへんは、森田芳光監督「家族ゲーム」の舞台になったところじゃないだろうか。追悼でこないだやってたけど、やっぱり名作だ。

 相生橋を渡ると、江東区から中央区に入る。
 すると、なんとあのレバーフライの店を発見した。月島のもんじゃ焼街の近くにあった店がなくなって、どこへ行ったのか、ずっと気にしていたのだ。廃業したのかと思っていたら、こんなところに新しい店を構えていたとは。

 豚のレバーをうすーく切ってフライにし、あまじょっぱいソースダレにくぐらせてある。ハムカツのレバー版だ。どんなレバー嫌いだって、これならおいしく食べられるはずだ。昔から月島では子どものおやつとして人気だったらしい。味は変わらず、絶品。歩くとトクするなあ。



火野自転車



 ニュースやワイドショーだと、最近、自転車はすっかり悪者だが、タレントを起用する番組では、逆にその神通力たるやスゴイ。「自転車でやりましょう」って言えば、企画が通る感じだ。

 そんななかで、いちばんおもしろいのがNHKでやっている火野正平の旅モノだ。視聴者の思い出の場所を火野が代わりに自転車で訪ねる。
 峠を登ったり、暑かったり寒かったり、けっこうな苦労をして、目的地に着き、そこで視聴者からの手紙を読む。旅の理由づけを見ず知らずの人の思い出に借りる。手紙の内容が、実は号泣ものだったりもする。よく考えたものだなと思う。

 カメラマンや音声マンも自転車に乗っている。これがまたいい。同じライダー目線だから、火野正平と一緒にツーリングしているみたいなのだ。

 火野の愛車はスチールフレームのトマジーニ。本人はまったく自転車に興味がなさそうだから、バックにわかった人がいるのだろう。サイクルウェアを着ず、たいていダボダボのカジュアルなカッコをしているのは本人の趣味だろうか。自由でいいなあ。

 なんといってもいいのは、火野正平の存在感だ。カッコイイ。天然のカッコよさ。こりゃ、女にモテるはずだ。ぼくの知り合いでは、矢貫 隆が似ている。矢貫さんもモテる。
 ツーリングの最中に口をついて出る言葉もいちいちおもしろい。上り坂で喘ぎながら、「NHKが、老人を虐待するのかあ!」と叫んだりする。

史上最良のBMWミニ



 次から次へといろいろ出るので、「ミニはいつ買ったらいいんでしょうか」なんて質問も出るのがBMWミニである。

 でも、今これは“買い”です、と自信を持っていえるのがミニ・クーペだ。コンバーチブルのプラットフォーム(車台)を強化して、小さなアルミルーフをかぶせた2座クーペである。

 頭上に圧迫感があって、フロントが重いミニを、謳い文句の「ゴーカート感覚」と感じたことは一度もないが、これは初めて心底イイ!と思ったミニだ。ファン・トゥ・ドライブでは、ロータス・エリーゼに次ぐんじゃないだろか。

 カッコもここまでやってくれると脱帽だ。単にカッコイイというよりも、初めてこのカタチを見たとき、ぼくはGTMとかミニ・マーコスみたいなBMCミニ・ベースのバックヤード・スペシャルに通じる“ヘンさ”を感じた。服だとか、味だとかにこだわらないイギリス人特有の“アマチュアっぽさ”といってもいい。

 そうしたら、なんとメーカーの広報写真にミニ・マーコスと一緒に撮った写真があったので驚いた。そこまでマーケティングしていたのか!? なんて言ったらヒネクレすぎだ。
 やっぱりエンスーがいるのだと思う、BMWミニの開発部隊には。だからこそ、ミニ・クーペがこんなに楽しいクルマになったのだ。BMWミニの見方が変わった一作。


初走り和田峠



 1年の計は元旦(と2日)にあり。去年の練習不足を反省する意味で、今日は自転車で和田峠へ行った。東京と神奈川の都県境にある峠だ。頂上はウチから45km。

 八王子(東京)側から和田峠を上るのは、何年ぶりだろう。同じ峠に出る醍醐林道でハチに刺されてから、こっち側からは上っていない。ハチに何度も刺されるのはよくないというし、なんたって、和田峠は厳しい。完全舗装だが、道は狭く、急峻な林間道路で、眺望はきかない。もっぱら自転車ヒルクライム修行の場、という感じの峠である。

 きのうのランニングの疲れが生々しく、往きの浅川サイクリングロードで早くもバテる。あー、最近つくづく疲れが取れなくなったなあ。
 陣馬街道をしばらく行ったところで引き返そうとも思ったが、速くて若いピナレロの修行僧にブチ抜かれて、元気をもらう。正月の2日から和田峠へ行くバカはオレだけじゃない。

 ここのところずっと好天なのに、まだ人家のある麓の道はウエットだった。路肩がガチガチに凍っているところもある。こりゃ上るのは無理だな。
 しかし、少し標高を上げたら、なぜか完全ドライになってしまった。

 本格的な上りは3kmあまり。とくに序盤がキツイ。ひと息ついて、中盤もキツイ。対向車は滅多に来ないが、狭いし、曲がりくねっているので、要注意だ。ヴィッツとすれ違ったら、ブレーキパッドの焦げるニオイがした。エンブレ使えよな。 終盤は斜度が緩くなって楽になる。


 絶対リタイアだと思っていたら、意外にも完登できた。
 頂上も、見晴らしはきかない。あるのはガメつい峠の茶屋だけ。

 久しぶりに来たら、道路脇にトイレが出来ていた。茶屋が管理していて、茶屋のお客以外は有料(100円)と書いてある。なんだそりゃ、管理料なら全員からとるべきだろう。茶屋にお金落とした人はタダなら、茶屋の私有トイレなのか。周囲の立木にも、茶屋の名であれすんなこれすんなと注意書きが書いてあって、峠の美観を損ねている。

 午後になると、ハンドルがとられるほどの強い北風が吹いてきた。ネックウォーマーを鼻まで延ばしてゆっくり山を下る。



                                                                                                                                                                    

元旦ラン



 大みそかのカウントダウン・イベント、ジルベスターコンサートのテレビ中継、今年はラベルのボレロ。東フィルを指揮するのは若手の金聖響。

 毎年「時間ピッタリ」の見事な演奏が見ものなのに、今年はなんと、0時00分の5秒近く前に演奏が終わってしまった。クラッカーが鳴るまでの数秒間に会場から失笑が起こっていた。ボレロなんか、曲そのものが時計の刻みみたいに単純で、いちばん合わせやすいはずなのに! 指揮者はギャラ返上ものですね。
 でも、言い訳のとき、楽譜の小節番号と時計の進みを合わせてゆく、というネタばらしを聞けたのはおもしろかった。なのになんで合わなかったんだよ、って話だけど。

 明けて、年に一度の元旦。夜勤バイトの息子が昼前に戻るというので、お屠蘇の乾杯はそれまでおあずけ。アサイチで多摩サイにランニングへ。

 なんぼなんでも、元旦の朝から走るのは初めてだ。そんなやついるのかな、と思ったら大間違いで、河川敷の駐車場はすでに大賑わい。マラソン大会が開かれようとしていた。

 走り出しても、ランナーの数はふだんの週末とそれほど変わらない。明日あさってあたりは、箱根大学駅伝中継に触発された人でまた賑わうんだろうな。

プロフィール

下野康史(かばた・やすし)

Author:下野康史(かばた・やすし)
「カーグラフィック」「NAVI」の編集部を経て、1988年からフリーの自動車ライター。

●主な著作
「峠狩り 第二巻」(八重洲出版)
「峠狩り」(八重洲出版)
「ポルシェより、フェラーリより、ロードバイクが好き」(講談社文庫)
「21世紀自動車大事典」(二玄社)
「ロードバイク熱中生活」(ダイヤモンド社)
「イッキ乗り」(二玄社)
「図説 絶版自動車」(講談社α文庫)
「運転」(小学館)
「自動車熱狂時代」(東京書籍)
「今度は、この3ケタ国道を走ってみたい」(JTB出版)
「今朝、僕はクルマの夢を見た」(マガジンハウス)  
「乗んなきゃわかんない」(朝日新聞社)

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